交通事故コラムcolumn

  • 2019.12.25

後遺障害等級1級が認定されるのはどんな場合?具体的症状,慰謝料や逸失利益の額について

 治療が終わっても後遺症が残ってしまう場合があります。残存した症状によっては,後遺障害等級が認定されることがあり,認定を受けた場合には等級に応じて慰謝料や逸失利益の賠償を受けることができます。そのうち,ここでは後遺障害等級1級が認定されるのはどのような症状が残った場合か,認定された場合の慰謝料の額や逸失利益の計算方法について,弁護士がご説明します。

 



目次

1 後遺障害等級1級に該当する症状

2 別表Ⅰ第1級の各症状について

(1)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

(2)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

3 別表Ⅱ第1級の各症状について

(1)両眼が失明したもの

(2)咀嚼及び言語の機能を廃したもの

(3)両上肢をひじ関節以上で失ったもの

(4)両上肢の用を全廃したもの

(5)両下肢をひざ関節以上で失ったもの

(6)両下肢の用を全廃したもの

4 慰謝料の額

5 逸失利益の計算方法

6 まとめ



本文

1 後遺障害等級1級に該当する症状

 後遺障害等級は重い方から1級~14級に区分されています。もっとも,後遺障害等級は認定されること自体のハードルが高く,14級であっても決して症状が軽いというわけでもありません。後遺障害等級1級は,等級区分上最も重い後遺障害が残ってしまった場合ということになります。
 後遺障害等級1級は,介護が必要な場合の別表Ⅰと,介護を要しない場合の別表Ⅱの2種類が存在します。後述しますが,自賠責保険では別表Ⅰと別表Ⅱで慰謝料額が変わりますが,任意保険基準や裁判基準では慰謝料額に違いはありません。
 別表Ⅰ第1級に該当する症状としては,
  ①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの
  ②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,常に介護を要するもの
 別表Ⅱ第1級に該当する症状としては,
  ①両眼が失明したもの
  ②咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  ③両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  ④両上肢の用を全廃したもの
  ⑤両下肢をひざ関節以上で失ったもの
  ⑥両下肢の用を全廃したもの
 という症状がそれぞれ挙げられています。一見して内容がわかりにくいものもあるので,項を改めてそれぞれの症状についてご説明します。



2 別表Ⅰ第1級の各症状について

(1)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

 神経系は,脳・脊髄からなる中枢神経系と,中枢神経から伸びる末梢神経系に分類できます。末梢神経系はさらに自律神経系と体性神経系に分類でき,自律神経系は交感神経と副交感神経にわかれています。
 神経障害と精神障害を分離することは困難で医学的に妥当でもないため,両者を峻別して判断するのではなく,症状を総合的に判断して等級が認定されます。
 もっとも,中枢神経系の脱落症状として感覚器に機能障害を生じ,それについて別個の後遺障害等級が存在する場合には,神経障害・精神障害の等級によることなくそれらの等級が認定されることになります。
 なお,ここでいう精神障害は器質性の障害(脳そのものの構造的・形状的な性質が障害されて起こる病気や症状)をいい,非器質性の精神障害(PTSDやうつ病など)は含まれません(別途9級,12級,14級が認定される余地はあります。)。
 1級に該当するための一般的な基準としては,「脳損傷に基づく高度の片麻痺と失言症との合併、脳幹損傷に基づく用廃と同程度の四肢麻痺と構音障害との合併といったように日常全く自用を弁ずることができないものや、高度の認知症や情意の荒廃のような精神症状のため、常時看視を必要とするもの」に該当するか否かによります。
 1級が認定されうる神経障害・精神障害の具体的な傷病名としては,
  ①高次脳機能障害(認知機能や人格変化が特徴的な症状)
  ②身体性機能障害(主に麻痺)
  ③脊髄損傷(主に麻痺)
 といったものが挙げられます。

 ①高次脳機能障害については,「身体機能は残存しているが高度の認知症があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの」といえる場合には,常に介護が必要と認められ1級と認定されます。
 ②身体性機能障害や③脊髄損傷により生じる麻痺の症状については,程度に応じ,
  ・高度(運動性・支持性がほとんど失われ基本動作ができないもの)
  ・中程度(運動性・支持性が相当程度失われ基本動作にかなりの制限があるもの)
  ・軽度(運動性・支持性が多少失われ基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれて
   いるもの)
 の3段階で分類されており,麻痺の部位については,
  ・四肢麻痺
  ・片麻痺(左右いずれかの上下肢の麻痺)
  ・対麻痺(両上肢または両下肢の麻痺)
  ・単麻痺(上肢または下肢の一肢の麻痺)
 に分類され,その組み合わせにより等級が定まります。

 ②身体性機能障害に基づく麻痺については,
  ・高度の四肢麻痺が認められる場合
  ・中程度の四肢麻痺があり,食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する場合
 のいずれかに当たると,1級と認定されます。

 ③脊髄損傷に基づく麻痺については,
  ・高度の四肢麻痺が認められる場合
  ・高度の対麻痺が認められる場合
  ・中程度の四肢麻痺があり,食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する場合
  ・中程度の対麻痺があり,食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する場合
 のいずれかに当たると,1級と認定されます。



(2)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,随時介護を要するもの

 胸部・腹部の臓器は,横隔膜によって上部の胸腔と下部の腹腔とに分かれ,それぞれ内面が胸膜と腹膜でおおわれています。胸部臓器のおもなものは心臓と左右の肺で,腹部臓器には胃,小腸,虫垂,大腸,肛門,肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓,尿管,膀胱などがあります。
 胸腹部臓器のうち,後遺障害が残った場合に1級に該当し得る臓器は基本的に胸部臓器(呼吸器)のみです。
 障害のために労務に服することができず,生命維持に必要な身の回り処理の動作について随時介護を必要とする場合に1級と認定されることになりますが,胸部臓器については動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果である程度客観的に等級が決まります。
 動脈血酸素分圧が50Torr以下である場合か,動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)にない場合で,呼吸機能の低下により常時介護が必要であれば1級と認定されます。等級認定にあたり,スパイロメトリー検査や,呼吸困難の程度も参照されることがあります。



3 別表Ⅱ第1級の各症状について

(1)両眼が失明したもの

 後遺障害の症状で「視力」というときは,裸眼視力ではなく矯正視力のことです。矯正視力とは,眼鏡,コンタクトレンズ,眼内レンズ等の装用で得られた視力のことをいいます。
 視力は,万国式試視力表(「C」の切れ目の方向を答えさせる一般的な視力表です)により検査します。失明とは眼球を失った場合や,明暗が判断できない,または明暗がようやく区別できる程度のものとされています。
 交通事故で視力が低下する場合としては,眼球の外傷や視神経の損傷が考えられます。なお,外傷性頸部症候群(いわゆる,むちうち症)によっても視力が低下することがありますが,一時的な低下であるため後遺障害には該当しません。
 具体的には,視神経損傷,視束管骨折,網膜剥離,眼水晶体脱臼,眼底疾患などの診断名がつくことが多いです。



(2)咀嚼及び言語の機能を廃したもの

 咀嚼の機能を廃したものとは,流動食以外を摂取できない状態をいいます。また,食べ物を飲み下すことが困難になる嚥下障害も,咀嚼障害の程度を準用して等級認定がされます。
 不正な噛み合わせ,咀嚼を司る筋肉の異常,顎関節の障害,開口障害,歯牙損傷等を原因として発症します。顎骨骨折や頚椎脱臼骨折といった診断名がつく場合に残りやすい後遺障害です。
 言語の機能を廃したものとは,4種の語音のうち3種以上の発音不能のものをいいます。
 4種の語音とは,
  ①口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
  ②歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
  ③口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
  ④咽頭音(は行音)
 の4種類です。



(3)両上肢をひじ関節以上で失ったもの

 上肢とは腕のことで,鎖骨,肩甲骨,上腕骨,橈骨,尺骨の5つの骨で構成されています。「3大関節」とは肩,ひじ,手首のことです。
 「ひじ関節以上で失った」とは,
  ①肩関節において,肩甲骨と上腕骨を離断したもの
  ②肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
  ③ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの
 のいずれかの場合をいいます。



(4)両上肢の用を全廃したもの

 「両上肢の用を全廃した」とは,
  ①3大関節(肩・ひじ・手首)のすべてが全く可動しないか,可動域が10%以下に制限され,
   手指の全部の用を廃したもの
  ②3大関節(肩・ひじ・手首)が完全に麻痺したか,完全麻痺に近い状態で,手指の全部の用を
   廃したもの
 のいずれかの場合をいいます。
 なお,「手指の全部の用を廃した」とは,
  ①手指の末節骨の半分以上を失ったもの
  ②中手指節関節もしくは近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を
   残すもの
 のいずれかの場合をいいます。



(5)両下肢をひざ関節以上で失ったもの

 下肢とは足のことで,大腿骨,膝蓋骨,脛骨,腓骨といった骨や,股関節・ひざ関節・足関節までの3大関節及び足指から構成されます。後遺障害の認定上は,足指は別に取り扱われます。
 「ひざ関節以上で失った」とは,
  ①股関節において,寛骨と大腿骨を離断したもの
  ②股関節と膝関節との間において切断したもの
  ③膝関節において,大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの
 のいずれかの場合をいいます。



(6)両下肢の用を全廃したもの

 「両下肢の用を全廃した」とは,
  ①3大関節(股関節・膝・足首)のすべてが全く可動しないか,可動域が10%以下に制限
   され,足指の全部の用を廃したもの
  ②3大関節(股関節・膝・足首)が完全に麻痺したか,完全麻痺に近い状態で,足指の全部の
   用を廃したもの
 のいずれかの場合をいいます。
 なお,「足指の全部の用を廃した」とは,
  ①第1の足指(親指)は末節骨の半分以上,その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの
  ②中足指節関節もしくは近位指節間関節(第1の足指(親指)にあっては指節間関節)に著しい
   運動障害を残すもの
 のいずれかの場合をいいます。



4 慰謝料の額

 後遺障害等級1級が認定された場合,後遺障害部分の慰謝料はいくらになるのでしょうか。
 慰謝料には3つの算定基準,低額なものから,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準があります。後遺障害等級1級の場合,各基準による慰謝料額は下記のとおりです。なお,前述のとおり自賠責基準のみ別表Ⅰと別表Ⅱで慰謝料額が異なります。
  ①自賠責基準別表Ⅰ 1600万円
   自賠責基準別表Ⅱ 1100万円
  ②任意保険基準   1300万円(保険会社により多少増減します)
  ③裁判基準     2800万円
 このように3つの基準では裁判基準が最も高額となります。ただし,裁判基準で慰謝料交渉をするためには弁護士に依頼する必要があります。



5 逸失利益の計算方法

 後遺障害が残った場合,逸失利益も受け取ることができます。逸失利益とは,後遺障害によって労働能力が失われたことによる将来の収入の減少のことです。

 逸失利益の額は,
  基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
 という計算式で求められます。

 詳細な説明はここでは割愛しますが,簡単にいうと,事故前の収入額を基礎に,労働能力が失われた割合と就労可能年数に応じた数値を乗じて算出するということです。
 後遺障害等級と関係があるのは労働能力喪失率で,1級の場合は別表ⅠとⅡいずれも原則として100%です。ただし,事故前の職種や後遺障害の具体的内容から実際にどの程度の労働能力を失ったといえるかによって変動し得るため,喪失率が大きく争われることもあります。



6 まとめ

 後遺障害等級が認定される場合は,弁護士が介入することにより慰謝料の算定基準が大幅に増額するため,弁護士に依頼することに大きなメリットがあります。
 では,どんな弁護士に依頼しても同じ結果になるのかというと,そういうわけではありません。適切な後遺障害等級を認定してもらうには,後遺障害の認定基準や医学的な事柄についての知識が必要ですし,逸失利益についてもご依頼者様から事故前の仕事内容や後遺障害による仕事への支障について丁寧に聞き取ったうえ,説得的な交渉を展開しなければ,十分な賠償を受けることができません。

 H&パートナーズ法律事務所では,後遺障害等級申請や交渉についての経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。ご依頼者様から丁寧にお話を伺いながら交渉を進めて参りますので,ご安心して無料相談にお越しください。なお,遠方の方はもちろん,関西近辺でも,ご来所が難しい方には出張相談を行います。その点もお気軽にお問い合わせください。



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