交通事故コラムcolumn

  • 2019.12.11

後遺障害等級9級が認定されるのはどんな場合?具体的症状,慰謝料や逸失利益の額について

 治療が終わっても後遺症が残ってしまう場合があります。残存した症状によっては,後遺障害等級が認定されることがあり,認定を受けた場合には等級に応じて慰謝料や逸失利益の賠償を受けることができます。そのうち,ここでは後遺障害等級9級が認定されるのはどのような症状が残った場合か,認定された場合の慰謝料の額や逸失利益の計算方法について,弁護士がご説明します。

 



目次

1 後遺障害等級9級に該当する症状

2 各症状について

(1)両眼の視力が0.6以下になったもの

(2)1眼の視力が0.06以下になったもの

(3)両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの

(4)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

(5)鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

(6)咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

(7)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

(8)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

(9)1耳の聴力を全く失ったもの

(10)神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

(11)胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

(12)1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの

(13)1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの

(14)1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの

(15)1足の足指の全部の用を廃したもの

(16)外貌に相当程度の醜状を残すもの

(17)生殖器に著しい障害を残すもの

3 慰謝料の額

4 逸失利益の計算方法

5 まとめ



本文

1 後遺障害等級9級に該当する症状

 後遺障害等級は重い方から1級~14級に区分されています。もっとも,後遺障害等級は認定されること自体のハードルが高く,14級であっても決して症状が軽いというわけでもありません。ですので,後遺障害等級9級というのは,かなり重い後遺障害が残っている場合ということになります。

 後遺障害等級9級に該当する症状としては,
  ①両眼の視力が0.6以下になったもの
  ②1眼の視力が0.06以下になったもの
  ③両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
  ④両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  ⑤鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
  ⑥咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  ⑦両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  ⑧1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が
   1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
  ⑨1耳の聴力を全く失ったもの
  ⑩神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限される
   もの
  ⑪胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  ⑫1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
  ⑬1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
  ⑭1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
  ⑮1足の足指の全部の用を廃したもの
  ⑯外貌に相当程度の醜状を残すもの
  ⑰生殖器に著しい障害を残すもの
 という症状が挙げられています。一見して内容がわかりにくいものもあるので,項を改めてそれぞれの症状についてご説明します。



2 各症状について

(1)両眼の視力が0.6以下になったもの

 後遺障害の症状で「視力」というときは,裸眼視力ではなく矯正視力のことです。矯正視力とは,眼鏡,コンタクトレンズ,眼内レンズ等の装用で得られた視力のことをいいます。
 視力は,万国式試視力表(「C」の切れ目の方向を答えさせる一般的な視力表です)により検査しますが,「両眼の視力が0.6以下」というのは,両目で検査をして0.6以下というのではなく,片目ずつで検査をしていずれの目も視力が0.6以下であることをいいます。
 交通事故で視力が低下する場合としては,眼球の外傷や視神経の損傷が考えられます。なお,外傷性頸部症候群(いわゆる,むちうち症)によっても視力が低下することがありますが,一時的な低下であるため後遺障害には該当しません。
 具体的には,視神経損傷,視束管骨折,網膜剥離,眼水晶体脱臼,眼底疾患などの診断名がつくことが多いです。



(2)1眼の視力が0.06以下になったもの

 検査の仕方等は上記のとおりです。なお,両眼の視力が0.06以下となっても併合による繰り上げがされるのではなく,「両眼の視力が0.1以下になったもの」として6級が認定されることになります。



(3)両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの

 「半盲症」とは視神経繊維が,視神経交叉部及びそれより上部の視覚神経伝導路が障害され,注視点を境界として,両眼の視野の右半分または左半分が欠損するものをいいます。視野を形成する部位の脳梗塞や脳腫瘍,外傷あるいは視神経交叉周辺の下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫によって生じることがあります。
 「視野狭窄」とは,視野の広さが狭くなるもので,視野が全体的に狭くなる同心性狭窄と,視野の一部分が不規則な形で狭くなる不規則狭窄があります。眼球が原因となる場合は網膜剥離,網膜動脈閉塞症や緑内障,脳や視神経が原因の場合は脳梗塞,脳内出血,脳腫瘍などが考えられます。
 「視野変状」とは,本来は半盲症や視野狭窄も含む概念ですが,ここでは視野欠損を指します。視野欠損とは視野の一部が欠けていることをいい,見えていない部分のことを暗点といいます。
 左右の眼が相互に見えにくさを補っているため,視野の異常に気付きにくい場合もあり,視野の欠けている側だけよく人や物とぶつかるなど,なんらかの支障が生じてその原因を探るなかで視野の異常が判明することもあります。
 これらの視野の異常が9級に相当するためには,V/4視標(ゴールドマン視野計という視野を測るために用いる図表の一種です)による8方向の視野の角度の合計が,正常視野の角度の60%以下になっていることが必要です。なお,日本人の視野の平均値は,上60度,上外75度,外95度,外下80度,下70度,下内60度,内60度,内上60度で,合計560度ですので,合計336度以下まで視野が狭まっていれば9級に相当します。



(4)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

 「著しい欠損」とは,両方のまぶたの一部が失われたことによってまぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができない状態をいいます。
 まぶたの欠損は外貌の醜状障害(程度により7級,9級,12級)にも該当し得るため,両方の観点から検討して等級が高くなる方で認定されることになります。



(5)鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

 「鼻を欠損」とは,鼻軟骨部の全部または大部分を失ったことをいい,「機能に著しい障害を残す」とは,嗅覚の脱失または鼻呼吸が困難であることをいいます。
 鼻の欠損についても外貌の醜状障害に該当し得るため,いずれか高い方の等級が認定されることになります。鼻軟骨部の全部または大部分を欠損した場合は7級,鼻軟骨部の一部または鼻翼を欠損した場合は12級となります。



(6)咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

 咀嚼の機能に障害を残すものとは,ごはん,煮魚,ハムなどは問題なく咀嚼できるものの,たくあん,らっきょう,ピーナッツなどは咀嚼が十分にできない状態をいいます。
 顎骨骨折や頚椎脱臼骨折といった診断名がつく場合に残りやすい後遺障害です。
高次脳機能障害による麻痺,食道の狭窄,舌の異常などにより生じる嚥下障害(食べ物を飲み込むのに支障がある状態)についても咀嚼の機能障害と同様の基準で等級が認定されます。
言語の機能に障害を残すものとは,4種の語音のうち1種の発音が不能となった状態をいいます。

 4種の語音とは,
  ①口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
  ②歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
  ③口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
  ④咽頭音(は行音)
 の4種類です。



(7)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

 「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない」とは,平均純音聴力レベルが60dB以上であるか,または平均純音聴力レベルが50dB以上かつ最高明瞭度が70%以下となった状態をいいます。
 平均純音聴力レベルとは,4つの高さの違う音に対する聴力を計測して算出するもので,一般的に行われる聴力検査により測定します。単純にどの程度の音量であれば聴き取ることができるか,という検査になります。「ピー,ピー」という音が聞こえたら手元のボタンを押すという検査ですね。
 最高明瞭度とは,言葉の聞こえ方と聞き分ける能力を示すもので,語音聴力検査によりどの程度聞き取れたかをパーセントで表したものです。
 聴覚障害は,単独で発症するというよりも,高次脳機能障害や頸部捻挫などによる末しょう神経障害の症状として現れやすいです。聴覚障害の診断名としては,頭部外傷後神経性難聴や両側性難聴などになります。



(8)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

 「耳に接しなければ大声を解することができない」とは,平均純音聴力レベルが80dB以上となっている状態を,「1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難」とは,平均純音聴力レベルが50dB以上となっている状態をいいます



(9)1耳の聴力を全く失ったもの

 「聴力を全く失った」とは,平均純音聴力レベルが90dB以上となった状態をいいます。



(10)神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

 神経系は,脳・脊髄からなる中枢神経系と,中枢神経から伸びる末梢神経系に分類できます。末梢神経系はさらに自律神経系と体性神経系に分類でき,自律神経系は交感神経と副交感神経にわかれています。
 神経障害と精神障害を分離することは困難で医学的に妥当でもないため,両者を峻別して判断するのではなく,症状を総合的に判断して等級が認定されます。
 もっとも,中枢神経系の脱落症状として感覚器に機能障害を生じ,それについて別個の後遺障害等級が存在する場合には,神経障害・精神障害の等級によることなくそれらの等級が認定されることになります。
 「服することができる労務が相当な程度に制限される」とは,一般的な労働能力は残存しているものの,神経系統の機能又は精神の障害のため,社会通念上,就労可能な職種の範囲が相当程度に制限されている場合をいいます。事務作業等は可能であるものの,高所作業や自動車の運転は危険だと考えられるような場合が当たります。

 9級が認定されうる神経障害・精神障害の具体的な傷病名としては,
  ①高次脳機能障害(認知機能や人格変化が特徴的な症状)
  ②身体性機能障害(主に麻痺)
  ③脊髄損傷(主に麻痺)
  ④外傷性てんかん
  ⑤頭痛
  ⑥失調,めまいおよび平衡機能障害
  ⑦カウザルギー
  ⑧反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
 といった器質性の障害(脳そのものの構造的・形状的な性質が障害されて起こる病気や症状)と,
  ⑨うつ病
  ⑩PTSD
 といった非器質性の精神障害が挙げられます。

 ①高次脳機能障害については,問題解決能力などに障害が残り,作業効率や作業維持力などに問題がある場合,専門医が高所作業や自動車運転は危険であるとして認めないような場合に9級と認定されます。②身体性機能障害や③脊髄損傷による麻痺については,麻痺の部位と程度に応じて等級が決まります。

 麻痺の症状の程度については,
  ・高度(運動性・支持性がほとんど失われ基本動作ができないもの)
  ・中程度(運動性・支持性が相当程度失われ基本動作にかなりの制限があるもの)
  ・軽度(運動性・支持性が多少失われ基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれて
   いるもの)
 の3段階で分類されており,麻痺の部位については,
  ・四肢麻痺
  ・片麻痺(左右いずれかの上下肢の麻痺)
  ・対麻痺(両上肢または両下肢の麻痺)
  ・単麻痺(上肢または下肢の一肢の麻痺)
 に分類され,その組み合わせにより等級が定まります。

 ②身体性機能障害に基づく麻痺については,軽度の単麻痺が認められる場合に9級と認定されます。
 ③脊髄損傷に基づく麻痺については,一下肢に軽度の単麻痺が認められる場合に9級と認定されます。
 ④外傷性てんかんについては,数か月に1回以上の発作が転倒する発作等(意識障害の有無を問わず転倒する発作又は意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作)以外の発作である場合か,服薬の継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されている場合をいいます。転倒する発作等はより重度の発作ですので,そのような発作がでる場合で服薬により発作が完全には抑制できない場合には,より上位の等級(発作の頻度に応じて7級または5級)が認定されることになります。
 ⑤頭痛については,通常の労務に服することはできるが,激しい頭痛により,ときには労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種が相当な程度に制限されている場合に9級と認定されます。交通事故により生じる頭痛は,外傷による疼痛,動脈の発作性拡張で生じる血管性頭痛(片頭痛等),頸部や頭部の筋から疼痛が生じる筋攣縮性頭痛,後頚部交感神経の異常により発生する頸性頭痛(バレ・リュー症候群),大後頭神経痛や三叉神経痛が考えられます。疼痛の部位,性状,強度,頻度,持続時間,日内変動,疼痛の原因となる他覚的所見により後遺障害等級の該当性が判断されます。
 ⑥失調,めまいおよび平衡機能障害については,原因となる障害部位によって分けることが難しいため,症状を総合して等級が判断されています。バレ・リュー症候群,軽度外傷性脳損傷,脳脊髄液減少症,メニエール病などといった診断名がつくことが多いです。単に自覚症状があるというだけでなく,各種検査(眼振検査,迷路刺激検査,視刺激検査,体平衡検査など)により客観的な裏付けがなければ,後遺障害として認められるのは難しいです。
 通常の労務に服することはできるものの,めまいの自覚症状が強く,かつ,眼振その他平衡機能障害機能検査に明らかな異常所見が認められ,就労可能な職種が相当な程度に制限されている場合に,9級と認定されます。
 ⑦カウザルギーと⑧反射性交換神経性ジストロフィー(RSD)は,現在の医学的な分類上は複合性局所疼痛症候群(CRPS)としてまとめられ,カウザルギーはCRPSタイプⅡ,RSDはCRPSタイプⅠと分類されています。骨折,捻挫,打撲などの外傷をきっかけとして,慢性的な痛みと浮腫,皮膚温の異常,発汗異常などの症状を伴う難治性の慢性疼痛症候群です。そのうちカウザルギーは比較的太い末梢神経の損傷によって生じるもの,RSDは神経損傷を伴わず軽微な外傷によっても生じうるもの,として区分されています。
 疼痛の部位,性状,疼痛発作の頻度,疼痛の強度と持続時間及び日内変動,疼痛の原因となる他覚的所見などを総合的に考慮し,通常の労務に服することはできるものの,疼痛によりときには労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種が相当な程度に制限されている場合に,9級と認定されます。
 ただし,従来の区分でRSDに当たる場合は,関節拘縮,骨の萎縮,皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮など)が認められることも必要となります。



(11)胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

 胸部・腹部の臓器は,横隔膜によって上部の胸腔と下部の腹腔とに分かれ,それぞれ内面が胸膜と腹膜でおおわれています。胸部臓器のおもなものは心臓と左右の肺で,腹部臓器には胃,小腸,虫垂,大腸,肛門,肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓,尿管,膀胱などがあります。
 胸腹部臓器のうち,後遺障害が残った場合に9級に該当し得る臓器は,①胸部臓器(呼吸器),②心臓,③食道,④胃,⑤小腸,⑥大腸,⑦肝臓,⑧膵臓,⑨腎臓・尿管・尿道です。そのほか,⑩腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニアが残存した場合も後遺障害等級9級が認定される可能性があります。
 「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」とは,通常の労務に服することはできるものの,胸腹部臓器の障害のために就労可能な職種が相当な程度に制限されている場合をいいます。

 以下,各障害についてどの程度であれば9級と認定されるのかをみていきます。ただし,以下で述べる障害が残っても,現実に労務にほとんど支障をきたさない場合は13級が認定されるにとどまるので注意が必要です。

 ①胸部臓器(呼吸器)については,原則として動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果で客観的に等級が決まります。動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下で,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torrから43Torr)である場合に,9級と認定されます。なお,スパイロメトリー検査や,呼吸困難程度も参照されることがあります。
 ②心臓については,心筋梗塞,狭心症,心臓外傷等により心機能が低下したために運動耐容能(どの程度の運動に耐えられるかの限界)の低下が中程度である場合に,9級と認定されます。ペダルが徐々に重くなる自転車をこぐ運動を行い,心電図,血圧,呼気ガスを測定することで運動耐容能を検査し,6METsを超える強度の身体活動が制限される場合に,中程度の低下と判断されます。METs(メッツ)とは運動や作業強度の単位で,6METsの身体活動としては,階段を昇る,雪かき,早足での歩行などが挙げられます。
 また,ペースメーカーを植え込んだ場合(ペースメーカー植え込みによってもなお心機能が低下している場合は,併合されて等級が繰り上がります。)や,房室弁または大動脈弁を置換し継続的に抗凝血薬療法が必要な場合も,9級に該当します。
 ③食道については,食道の狭窄による通過障害がある場合に9級に該当します。通過障害があるといえるには,通過障害の自覚症状があり,かつ,消化管造影検査により食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められる必要があります。
 ④胃については,胃の切除がなされたことにより,消化吸収障害およびダンピング症候群(食後のめまいや起立不能等)が生じている場合に9級に該当します。
 消化吸収障害が認められるのは,胃の全部を失った場合か,噴門部または幽門部を含む胃の一部を失い低体重等(BMIが20以下であること。事故前からBMIが20以下である場合は,事故前より体重が10%以上減少したこと。)になった場合です。
 ダンピング症候群が認められるのは,胃の全部または幽門部を含む胃の一部を失った場合か,早期ダンピング症候群に起因する症状(食後30分以内のめまいや起立不能)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(食後2~3時間後の全身脱力感やめまい)がみられる場合です。
 ⑤小腸については,小腸を切除し残存する空腸および回腸の長さ100㎝以下となった場合か,小腸皮膚瘻から小腸内容が100ml/日以上漏出するもののパウチ等で維持管理できる場合に9級と認定されることになります。
 ⑥大腸については,便秘のために用手摘便(肛門から指を入れ便を排出すること)が必要な場合,便失禁のため常時おむつの装着が必要な場合に9級と認定されます。
 ⑦肝臓については,肝硬変(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるもの)が残存した場合に9級と認定されます。
 ⑧膵臓については,外分泌機能(消化液を分泌する機能)と内分泌機能(ホルモンを分泌する機能)の両方に障害が残存する場合に9級と認定されます。
 外分泌機能に障害があるといえるのは,上腹部痛,脂肪便,頻回の下痢等の症状が出ていることを前提として,膵臓の一部を切除した場合か,BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示す場合か,ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g)を示す場合か,アミラーゼまたはエラスターゼの異常低値が認められる場合であることが必要です。
 内分泌機能に障害があるといえるのは,異なる日に行った経口糖負荷試験により境界型または糖尿病型であることが2回以上確認され,空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であり,Ⅱ型糖尿病に該当しないことが必要です。
 ⑨腎臓・尿管・尿道については,腎臓を失っておらずGFRが30ml/分を超え50ml/分以下の場合,腎臓を失いGFRが50ml/分を超え70ml/分以下の場合,尿禁制型尿路変向術を行った場合,排尿障害により残尿が100ml以上である場合,尿失禁のため常時パッド等を装着しなければならないがパッドの交換までは必要がない場合にそれぞれ9級が認定されます。
 ⑩腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニアが残存した場合ですが,これらはいずれも腹部臓器が腹壁等から脱出して正常な位置から外れることで,臓器が脱出した部分が外見上膨らんでみえるというものです。
 手術痕や外傷の傷跡などを原因とする場合で腹壁の裂け目から臓器が脱出している場合を腹壁瘢痕ヘルニア,手術痕等以外を原因とする腹壁の裂け目から臓器が脱出している場合を腹壁ヘルニア,鼠径部で腸や内臓脂肪が脱出した場合を鼠経ヘルニアといいます。
 腹壁瘢痕ヘルニアとは,開腹手術の痕や外傷後の傷痕などで筋膜の癒合がうまくいかず隙間があいて,その隙間から内臓脂肪や腸管が脱出し,傷痕が外見上大きく膨らむことです。
 常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められる場合か,立った状態でヘルニア内容の脱出・膨隆が認められる場合に,9級と認定されます。



(12)1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの

 親指については指節間関節(第1関節)以上を,その他の指については近位指節間関節(第2関節)以上を失うと,「手指を失った」と評価されることになります。



(13)1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの

 「用を廃した」とは,末節骨(第1関節の先の骨です。)の長さの1/2以上を失った場合,中手指節関節(親指の第2関節,ほかの指の第3関節)または近位指節間関節(第2関節。親指については指節間関節(第1関節)。)に著しい運動障害(可動域が1/2以下に制限)が残った場合のいずれかに当たる場合をいいます。



(14)1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの

 片方の足の親指とその他の指を1本以上失った場合で,「足指を失った」とは,中足指節関節(足指の付け根の関節)から先を失った場合をいいます。



(15)1足の足指の全部の用を廃したもの

 「足指の全部の用を廃した」とは,
  ①親指の末節骨の長さの1/2を失った場合
  ②親指以外の足指の中節骨もしくは基節骨を切断したか,遠位指節間関節もしくは
   近位指節間関節で離断した場合
  ③中足指節間接または近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限される場合
   で,全ての指について①,②,③のいずれかに当てはまる場合に9級と認定されます。



(16)外貌に相当程度の醜状を残すもの

 「外貌」とは,頭部や顔面部,頸部といった日常露出する部分で,上肢と下肢を除いたものです。「醜状」とは,傷痕等のことで,線条痕,瘢痕,欠損,ケロイド,血腫,色素沈着などがあります。
 「相当程度の醜状を残す」とは,顔面部の長さ5cm以上の線条痕で,人目につく程度以上のものをいいます。9級と認定されるのは顔面部の線条痕のみで,線条痕以外の傷跡や顔面部以外の線条痕については,程度に応じて12級や7級が認定されることになります。



(17)生殖器に著しい障害を残すもの

 「生殖器に著しい障害を残す」とは,生殖機能は残存しているものの,通常の性交では生殖を行うことができないものをいいます。

 具体的には,
  ・陰茎の大部分を欠損した場合(陰茎を膣に挿入できないと認められる場合のみ)
  ・勃起障害を残す場合
  ・射精障害を残す場合
  ・膣口狭窄を残す場合(陰茎を膣に挿入できないと認められる場合のみ)
  ・両側の卵管の閉鎖または癒着を残す場合(画像所見がある場合のみ)
  ・子宮頸管に閉鎖を残す場合(画像所見がある場合のみ)
  ・子宮を失った場合(画像所見がある場合のみ)
 のいずれかに該当する場合をいいます。



3 慰謝料の額

 後遺障害等級9級が認定された場合,後遺障害部分の慰謝料はいくらになるのでしょうか。
 慰謝料には3つの算定基準,低額なものから,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準があります。後遺障害等級9級の場合,各基準による慰謝料額は下記のとおりです。
  ①自賠責基準   245万円
  ②任意保険基準  300万円(保険会社により多少増減します)
  ③裁判基準    690万円
 任意保険基準と比較しても,裁判基準だと2倍以上の慰謝料額になります。ただし,裁判基準で慰謝料交渉をするためには弁護士 に依頼する必要があります。



4 逸失利益の計算方法

 後遺障害が残った場合,逸失利益も受け取ることができます。逸失利益とは,後遺障害によって労働能力が失われたことによる将来の収入の減少のことです。

 逸失利益の額は,
  基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
 という計算式で求められます。

 詳細な説明はここでは割愛しますが,簡単にいうと,事故前の収入額を基礎に,労働能力が失われた割合と就労可能年数に応じた数値を乗じて算出するということです。
 後遺障害等級と関係があるのは労働能力喪失率で,9級の場合は原則として35%です。ただし,事故前の職種や後遺障害の具体的内容から実際にどの程度の労働能力を失ったといえるかによって変動し得るため,喪失率が大きく争われることもよくあります。特に,胸腹部臓器の機能障害や外貌醜状,性機能障害などは労働能力にどの程度の影響があるか微妙なことも多く,争いになりやすいです。



5 まとめ

 後遺障害等級が認定される場合は,弁護士が介入することにより慰謝料の算定基準が大幅に増額するため,弁護士に依頼することに大きなメリットがあります。
 では,どんな弁護士に依頼しても同じ結果になるのかというと,そういうわけではありません。適切な後遺障害等級を認定してもらうには,後遺障害の認定基準や医学的な事柄についての知識が必要ですし,逸失利益についてもご依頼者様から事故前の仕事内容や後遺障害による仕事への支障について丁寧に聞き取ったうえ,説得的な交渉を展開しなければ,十分な賠償を受けることができません。

 H&パートナーズ法律事務所では,後遺障害等級申請や交渉についての経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。ご依頼者様から丁寧にお話を伺いながら交渉を進めて参りますので,ご安心して無料相談にお越しください。なお,遠方の方はもちろん,関西近辺でも,ご来所が難しい方には出張相談を行います。その点もお気軽にお問い合わせください。



相談料・着手料無料

まずはお気軽にお問い合わせください

電話受付時間外土・日・祝日は、メールによるお問い合わせ・相談予約を承ります。

申し訳ありませんが、お電話による法律相談はお受けしておりません。皆様の置かれている状況を正確に把握するため、ご相談は面談のみとさせていただいております。何卒ご了承くださいませ。

川西、宝塚、伊丹で交通事故にお悩みなら弁護士にご相談を|H&パートナーズ法律事務所