交通事故コラムcolumn

  • 2019.12.06

後遺障害等級8級が認定されるのはどんな場合?具体的症状,慰謝料や逸失利益の額について

 治療が終わっても後遺症が残ってしまう場合があります。残存した症状によっては,後遺障害等級が認定されることがあり,認定を受けた場合には等級に応じて慰謝料や逸失利益の賠償を受けることができます。そのうち,ここでは後遺障害等級8級が認定されるのはどのような症状が残った場合か,認定された場合の慰謝料の額や逸失利益の計算方法について,弁護士がご説明します。

 



目次

1 後遺障害等級8級に該当する症状

2 各症状について

(1)1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの

(2)脊柱に運動障害を残すもの

(3)1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの

(4)1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの

(5)1下肢を5センチメートル以上短縮したもの

(6)1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

(7)1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

(8)1上肢に偽関節を残すもの

(9)1下肢に偽関節を残すもの

(10)1足の足指の全部を失ったもの

3 慰謝料の額

4 逸失利益の計算方法

5 まとめ



本文

1 後遺障害等級8級に該当する症状

 後遺障害等級は重い方から1級~14級に区分されています。もっとも,後遺障害等級は認定されること自体のハードルが高く,14級であっても決して症状が軽いというわけでもありません。ですので,後遺障害等級8級というのは,かなり重い後遺障害が残っている場合ということになります。
 後遺障害等級8級に該当する症状としては,
  ①1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの
  ②脊柱に運動障害を残すもの
  ③1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
  ④1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
  ⑤1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  ⑥1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  ⑦1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  ⑧1上肢に偽関節を残すもの
  ⑨1下肢に偽関節を残すもの
  ⑩1足の足指の全部を失ったもの
 という症状が挙げられています。一見して内容がわかりにくいものもあるので,項を改めてそれぞれの症状についてご説明します。



2 各症状について

(1)1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの

 後遺障害の症状で「視力」というときは,裸眼視力ではなく矯正視力のことです。矯正視力とは,眼鏡,コンタクトレンズ,眼内レンズ等の装用で得られた視力のことをいいます。
 視力は,万国式試視力表(「C」の切れ目の方向を答えさせる一般的な視力表です)により検査します。失明とは眼球を失った場合や,明暗が判断できない,または明暗がようやく区別できる程度のものとされています。
 交通事故で視力が低下する場合としては,眼球の外傷や視神経の損傷が考えられます。なお,外傷性頸部症候群(いわゆる,むちうち症)によっても視力が低下することがありますが,一時的な低下であるため後遺障害には該当しません。
 具体的には,視神経損傷,視束管骨折,網膜剥離,眼水晶体脱臼,眼底疾患などの診断名がつくことが多いです。



(2)脊柱に運動障害を残すもの

 脊柱とはいわゆる背骨のことで,上から7つの頚椎,12に胸椎,5つの腰椎と仙骨,尾骨からなります。ただし,後遺障害等級の認定においては,頸部や体幹の支持機能等を有さない仙骨及び尾骨は脊柱とは扱われません。
 運動障害は,単に痛みにより動かせない場合は含まれず(別途,局部の神経症状として後遺障害が認定される可能性はあります。),運動障害の原因が画像からわかる必要があります。

 8級でいう「運動障害」に該当するのは,下記のいずれかにより,頸部または胸腰部の可動域が参考可動域角度(通常人が一般に可動できる角度)の1/2以下に制限されている場合です。
 ・頸椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており,そのことがエックス線写真等により
  確認できるもの
 ・頸椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
 ・項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
 脊柱の運動障害は,頸椎骨折や腰椎骨折などに伴って生じます。



(3)1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの

 片方の手の親指を含む指2本か,親指を含まない指3本を失った場合に該当します。親指については指節間関節(第1関節)以上を,その他の指については近位指節間関節(第2関節)以上を失うと,「手指を失った」と評価されることになります。



(4)1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの

 「用を廃した」とは,末節骨(第1関節の先の骨です。)の長さの1/2以上を失った場合,中手指節関節(親指の第2関節,ほかの指の第3関節)または近位指節間関節(第2関節。親指については指節間関節(第1関節)。)に著しい運動障害(可動域が1/2以下に制限)が残った場合のいずれかに当たる場合をいいます。



(5)1下肢を5センチメートル以上短縮したもの

 下肢とは足のことで,大腿骨,膝蓋骨,脛骨,腓骨といった骨や,股関節・ひざ関節・足関節(足首)までの3大関節及び足指から構成されます。後遺障害の認定上は,足指は別に取り扱われます。
 下肢の短縮については,上前腸骨棘(骨盤の出っ張った部分)と下腿内果下端(くるぶしの骨の一番下の部分)の長さを,短縮していない側の下肢と比較することにより測定します。この範囲外,例えばかかとの損傷で下肢短縮が生じても後遺障害としては認定されません。測定にはレントゲン写真を用いるのが正確です。
 下肢短縮は脚長差補正の手術をすることで解消されることが多いようです。ただし,後遺障害等級認定前に脚長差補正手術を受けてしまうと,後遺障害として認めてもらえなくなってしまうので注意が必要です。



(6)1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 上肢とは腕のことで,鎖骨,肩甲骨,上腕骨,橈骨,尺骨の5つの骨で構成されています。「3大関節」とは肩,ひじ,手首のことです。
 「1関節の用を廃した」とは,肩関節,肘関節,手関節のいずれか1つが動かなくなることを指します。

具体的には,
 ①関節が強直(関節部の骨および軟骨の変形や癒着が原因でおこる関節可動域制限のこと)した
  もの(全く動かないか,可動域が10%以下に制限されたもの)
  ただし、肩関節については強直していても、肩甲骨が胸郭の上を動くことによりある程度
  動かすことができるため,肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがエックス線写真に
  より確認できるのであれば,測定結果にかかわらず強直したものとして扱います。
 ②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
  「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側(健康
  な方の関節)の可動域角度の10%程度以下となったものをいいます。
 ③人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に
  制限されているものをいいます。

 ①は骨の癒合や変形により物理的に動かすことができなくなった場合,②は神経麻痺により動かす
 ことができなくなった場合,③は人工関節・人工骨頭を挿入してもなお健側の半分しか動かすこと
 ができない場合です。

 関節可動域は他動運動(外的な力で動かすこと)により測定するのが原則ですが,麻痺による可動域制限の場合は適当ではないので,自動運動(自力で動かすこと)により測定します。また,原則として健側の可動域と比較しますが,もともと他方の上肢に障害があったり,事故によりいずれの上肢も障害を負った場合には,平均的な可動域(参考可動域といいます)との比較によることとなります。
 脱臼や骨折,腱板断裂,麻痺については腕神経叢麻痺,尺骨神経麻痺,橈骨神経麻痺といった診断名がつきます。



(7)1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 「1関節の用を廃した」とは,股関節,ひざ関節,足関節のいずれか2つが動かなくなることを指します。「用を廃した」の判断基準は上肢と同様です。



(8)1上肢に偽関節を残すもの

 「偽関節」とは,骨折部位が完全に癒合せず(くっつかず),関節ではないのに可動性を有している状態で,疼痛を伴うこともあります。偽関節は,骨折した場合,5%~10%程度の頻度で生じます。勝手に動いてしまわないように補装具で固定が必要な場合もあります。
 なお,両方の上肢が該当する場合は,併合されて1等級繰上り,7級になります。



(9)1下肢に偽関節を残すもの

 偽関節が下肢に生じた場合です。両方の下肢が該当する場合は,併合されて1等級繰上り,7級になります。



(10)1足の足指の全部を失ったもの

 「足指の全部を失った」とは,中足指節関節(足指の付け根の関節)から先を失った場合をいいます。



3 慰謝料の額

 後遺障害等級8級が認定された場合,後遺障害部分の慰謝料はいくらになるのでしょうか。
 慰謝料には3つの算定基準,低額なものから,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準があります。後遺障害等級8級の場合,各基準による慰謝料額は下記のとおりです。
 ①自賠責基準   324万円
 ②任意保険基準  400万円(保険会社により多少増減します)
 ③裁判基準    830万円
 任意保険基準と比較しても,裁判基準だと2倍以上の慰謝料額になります。ただし,裁判基準で慰謝料交渉をするためには弁護士に依頼する必要があります。



4 逸失利益の計算方法

 後遺障害が残った場合,逸失利益も受け取ることができます。逸失利益とは,後遺障害によって労働能力が失われたことによる将来の収入の減少のことです。
 逸失利益の額は,
  基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
 という計算式で求められます。

 詳細な説明はここでは割愛しますが,簡単にいうと,事故前の収入額を基礎に,労働能力が失われた割合と就労可能年数に応じた数値を乗じて算出するということです。
 後遺障害等級と関係があるのは労働能力喪失率で,8級の場合は原則として45%です。ただし,事故前の職種や後遺障害の具体的内容から実際にどの程度の労働能力を失ったといえるかによって変動し得るため,喪失率が大きく争われることもよくあります。特に,胸腹部臓器の機能障害や外貌醜状,睾丸の喪失などは労働能力にどの程度の影響があるか微妙なことも多く,争いになりやすいです。



5 まとめ

 後遺障害等級が認定される場合は,弁護士が介入することにより慰謝料の算定基準が大幅に増額するため,弁護士に依頼することに大きなメリットがあります。
 では,どんな弁護士に依頼しても同じ結果になるのかというと,そういうわけではありません。適切な後遺障害等級を認定してもらうには,後遺障害の認定基準や医学的な事柄についての知識が必要ですし,逸失利益についてもご依頼者様から事故前の仕事内容や後遺障害による仕事への支障について丁寧に聞き取ったうえ,説得的な交渉を展開しなければ,十分な賠償を受けることができません。

 H&パートナーズ法律事務所では,後遺障害等級申請や交渉についての経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。ご依頼者様から丁寧にお話を伺いながら交渉を進めて参りますので,ご安心して無料相談にお越しください。なお,遠方の方はもちろん,関西近辺でも,ご来所が難しい方には出張相談を行います。その点もお気軽にお問い合わせください。



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