交通事故コラムcolumn

  • 2019.10.09

交通事故で家族が遷延性意識障害(植物状態)に。成年後見の申立ては必要?

 交通事故で家族が遷延性意識障害(植物状態)になってしまったとき,加害者や保険会社に損害賠償を請求したり,損害賠償請求のために弁護士に依頼する場合には,裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。ここでは,成年後見がどのような制度なのか,どのような手続で選任されるのか,どれくらいの費用がかかるのかといったことについて,弁護士がご説明いたします。

 



目次

1 遷延性意識障害について

2 成年後見とは

3 成年後見申立手続の流れ

4 成年後見にかかる費用

5 成年後見人の役割

6 まとめ



本文

1 遷延性意識障害について

遷延性意識障害とは,日本脳神経外科学会による定義によると,
 ①自力移動が不可能である
 ②自力摂食が不可能である
 ③糞・尿失禁がある
 ④声を出しても意味のある発語が全く不可能である
 ⑤簡単な命令には辛うじて応じることもできるが、ほとんど意思疎通は不可能である
 ⑥眼球は動いていても認識することはできない
以上6項目が,治療にもかかわらず3か月以上続いた場合を「遷延性意識障害」とみなすとされています。

 重度の昏睡状態で,いわゆる植物状態といわれる状態です。脳死とは異なり,脳波があるため意識が全くないわけでありませんが,身体を動かすことができず言葉も発せないため,自分の考えなどを示せない状態です。



2 成年後見とは

 成年後見制度は,認知症などによって自身の意思を表示する能力を欠いている人を,不利な契約などをさせられてしまわないように後見人に代理権を付与して,後見人が本人に代わって契約などの法律行為をする,というものです。
 遷延性意識障害の場合,自分の意思を示すこと自体ができません。交通事故における相手方との示談や弁護士への事件処理の依頼も一種の契約ですが,契約は相手との意思の合致で成立するところ,自分の意思を示すことができない人は契約を締結することができません。被害者の方が未成年であれば,両親が法定代理人ですので両親が本人に代わって契約を締結できますが,成人であれば通常は法定代理人がいませんので,示談や弁護士は依頼する場合には成年後見人を選任してもらう必要があるのです。
 なお,遷延性意識障害の場合,一般的に「介護を要する後遺障害1級」が認定されるところ,慰謝料額は任意保険基準ですと1600万円近くであるのに対し,弁護士が介入した場合の基準である裁判基準ですと2800万円となるため,弁護士へ依頼することのメリットは非常に大きいです。



3 成年後見申立手続の流れ

成年後見を開始するためには,家庭裁判所への申立てが必要です。
成年後見を申立てできる人は,本人,配偶者,四親等内の親族です。

 後見人になるためには特別な資格は不要ですが,欠格事由(未成年者,破産者など)に該当する場合はなれません。申立書に後見人候補者を記入できますが,必ずその方が選任されるわけではありません。例えば,親族間で争いがある場合などは親族を候補者としても,弁護士等の専門職が選任されることが多いです。もちろん,親族等が後見人となることもありますが,全体としてみれば多くの場合,弁護士や司法書士などの専門職が後見人となっています。

 申立てから後見開始までの手続の流れは下記のとおりです。申立て後,審判がなされるまで概ね2か月前後ほどかかります。
 ①本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立て
 ②家庭裁判所の調査官による事実調査
  ※申立人,本人,成年後見人候補者が家庭裁判所に呼ばれて事情を聞かれます
 ③精神鑑定(おこなわれるケースは1割程度)
 ④審判
 ⑤審判の告知と通知
 ⑥後見開始

 申立てにあたって必要な書類は次のとおりですが,事案によって多少異なりますので,管轄の家庭裁判所に確認しておくのが確実です。
 ①申立書(家庭裁判所で定型書式がもらえます)
 ②申立人の戸籍謄本1通
 ③本人の戸籍謄本,戸籍の附票,登記されていないことの証明書,診断書各1通
 ④成年後見人候補者の戸籍謄本,住民票,身分証明書,登記されていないことの証明書各1通
 ⑤申立書付票
 ⑥本人に関する報告書



4 成年後見にかかる費用

 成年後見の申立てにかかる費用は下記のとおりです。申立てを弁護士等に依頼する場合にはこのほかに弁護士報酬等がかかります。
 ・成年後見の申立書に貼る収入印紙800円
 ・切手代3000円~5000円
 ・登記費用として収入印紙2600円
 ・鑑定費用5万円から10万円程度(鑑定が実施されるケースは約1割)



5 成年後見人の役割

 後見人となった人は,具体的には何をしなければならないのでしょう。交通事故に関連して後見申立をする場合は,直接的な目的は示談交渉や弁護士への依頼などかと思いますが,それだけをすればよいわけではありません。後見人は被後見人(本人)の財産管理と身上監護をしなければなりません。

まず,後見人に就任時にしなければならないのは,
 ①本人および関係者との面談(後見事務の方針策定)
 ②現金・通帳や有価証券,実印,銀行印等をそれまで管理していた人から引継ぐ
 ③銀行,保険会社等に後見人に就任したことを届け出
 ④後見人であることについての登記事項証明書の入手
 ⑤財産目録の作成(1か月以内に裁判所に提出)
 ⑥年間支出額の予定

 その後は,財産管理業務として,現金・預貯金・不動産等の管理,収支の管理,税務処理などを行い,身上監護業務として医療に関する契約,施設への入所契約,介護に関する契約などを行います。
 家庭裁判所はいつでも後見人に対して報告を求めることができますが,実務上は年に1回報告すれば足りることが多いです。もっとも,本人の生活環境が大きく変わったり,重要な財産を処分した場合には,その都度家庭裁判所に報告しなければなりません。



6 まとめ

 ご家族が遷延性意識障害になってしまった場合,示談交渉を進めたり,介護施設へ入所したりするにあたっては,後見人をつけることが必須です。申立自体は,家庭裁判所に聞きながらご家族が進めることもできなくはありませんが,後見人の仕事をご家族が担うのは大きな負担になります。

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