交通事故コラムcolumn

  • 2019.09.30

後遺障害等級5級が認定されるのはどんな場合?具体的症状,慰謝料や逸失利益の額について

 治療が終わっても後遺症が残ってしまう場合があります。残存した症状によっては,後遺障害等級が認定されることがあり,認定を受けた場合には等級に応じて慰謝料や逸失利益の賠償を受けることができます。そのうち,ここでは後遺障害等級5級が認定されるのはどのような症状が残った場合か,認定された場合の慰謝料の額や逸失利益の計算方法について,弁護士がご説明します。

 



目次

1 後遺障害等級5級に該当する症状

2 各症状について

 (1)1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの

 (2)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することが
    できないもの

 (3)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することが
    できないもの

 (4)1上肢を手関節以上で失ったもの

 (5)1下肢を足関節以上で失ったもの

 (6)1上肢の用を全廃したもの

 (7)1下肢の用を全廃したもの

 (8)両足の足指の全部を失ったもの

3 慰謝料の額

4 逸失利益の計算方法

5 まとめ



本文

1 後遺障害等級5級に該当する症状

 後遺障害等級は重い方から1級~14級に区分されています。もっとも,後遺障害等級は認定されること自体のハードルが高く,14級であっても決して症状が軽いというわけでもありません。ですので,後遺障害等級5級というのは,かなり重い後遺障害が残っている場合ということになります。

 後遺障害等級5級に該当する症状としては,
  ①1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの
  ②神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することが
   できないもの
  ③胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することが
   できないもの
  ④1上肢を手関節以上で失ったもの
  ⑤1下肢を足関節以上で失ったもの
  ⑥1上肢の用を全廃したもの
  ⑦1下肢の用を全廃したもの
  ⑧両足の足指の全部を失ったもの
 という症状が挙げられています。一見して内容がわかりにくいものもあるので,項を改めてそれぞれの症状についてご説明します。



2 各症状について

(1)1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの

 後遺障害の症状で「視力」というときは,裸眼視力ではなく矯正視力のことです。矯正視力とは,眼鏡,コンタクトレンズ,眼内レンズ等の装用で得られた視力のことをいいます。
 視力は,万国式試視力表(「C」の切れ目の方向を答えさせる一般的な視力表です)により検査します。失明とは眼球を失った場合や,明暗が判断できない,または明暗がようやく区別できる程度のものとされています。
 交通事故で視力が低下する場合としては,眼球の外傷や視神経の損傷が考えられます。なお,外傷性頸部症候群(いわゆる,むちうち症)によっても視力が低下することがありますが,一時的な低下であるため後遺障害には該当しません。
 具体的には,視神経損傷,視束管骨折,網膜剥離,眼水晶体脱臼,眼底疾患などの診断名がつくことが多いです。



(2)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 神経系は,脳・脊髄からなる中枢神経系と,中枢神経から伸びる末梢神経系に分類できます。末梢神経系はさらに自律神経系と体性神経系に分類でき,自律神経系は交感神経と副交感神経にわかれています。
 神経障害と精神障害を分離することは困難で医学的に妥当でもないため,両者を峻別して判断するのではなく,症状を総合的に判断して等級が認定されます。
 もっとも,中枢神経系の脱落症状として感覚器に機能障害を生じ,それについて別個の後遺障害等級が存在する場合には,神経障害・精神障害の等級によることなくそれらの等級が認定されることになります。
 なお,ここでいう精神障害は器質性の障害(脳そのものの構造的・形状的な性質が障害されて起こる病気や症状)をいい,非器質性の精神障害(PTSDやうつ病など)は含まれません(別途9級,12級,14級が認定される余地はあります。)。

5級が認定されうる神経障害・精神障害の具体的な傷病名としては,
 ①高次脳機能障害(認知機能や人格変化が特徴的な症状)
 ②身体性機能障害(主に麻痺)
 ③脊髄損傷(主に麻痺)
 ④外傷性てんかん
といったものが挙げられます。
 「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」とは,労災保険に関する通達によれば「独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていない場合がこれに該当する。」とされています。

 ①高次脳機能障害については,「単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの」といえる場合には5級に当たると考えられています。
麻痺の症状については,程度に応じ,
 ・高度(運動性・支持性がほとんど失われ基本動作ができないもの)
 ・中程度(運動性・支持性が相当程度失われ基本動作にかなりの制限があるもの)
 ・軽度(運動性・支持性が多少失われ基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度
  損なわれているもの)
の3段階で分類されており,麻痺の部位については,
 ・四肢麻痺
 ・片麻痺(左右いずれかの上下肢の麻痺)
 ・対麻痺(両上肢または両下肢の麻痺)
 ・単麻痺(上肢または下肢の一肢の麻痺)
に分類され,その組み合わせにより等級が定まります。

 ②身体性機能障害に基づく麻痺については,
 ・軽度の四肢麻痺が認められる場合
 ・中程度の片麻痺が認められる場合
 ・高度の単麻痺が認められる場合
 に5級と認定されます。

 ③脊髄損傷に基づく麻痺については,
 ・軽度の対麻痺が認められる場合
 ・一下肢に高度の単麻痺が認められる場合
 に5級と認定されます。

 ④外傷性てんかんについては,
 「1か月に1回以上の発作があり,かつ,その発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作,
  または意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作であるもの」
 に当たると,5級と認定されます。



(3)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 胸部・腹部の臓器は,横隔膜によって上部の胸腔と下部の腹腔とに分かれ,それぞれ内面が胸膜と腹膜でおおわれています。胸部臓器のおもなものは心臓と左右の肺で,腹部臓器には胃,小腸,虫垂,大腸,肛門,肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓,尿管,膀胱などがあります。
 胸腹部臓器のうち,後遺障害が残った場合に5級に該当し得る臓器は,①胸部臓器(呼吸器)と,②小腸,③大腸,④腎臓(尿管・膀胱・尿道)です。
 「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」とは,労災保険に関する通達によれば「独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていない場合がこれに該当する。」とされています。

 ①胸部臓器(呼吸器)については,原則として動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果で客観的に等級が決まります。スパイロメトリー検査や,呼吸困難の程度も参照されることがあります。
 ②小腸及び③大腸については,人工肛門を造設し,かつ,小腸または大腸の内容が漏出することにより,人工肛門の排泄口,ストマ(手術などによって腹壁につくられた排泄口のこと)周辺に著しい皮膚のびらん(ただれ)を生じ,便を貯める袋,パウチの装着ができない場合か,小腸または大腸の皮膚瘻(組織の深部に形成された膿痬を原因として皮膚の表面に通じている穴で,瘻孔のこと)を残すもので,瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので,パウチによる維持管理が困難な場合に,5級と認定されます。
 ④腎臓(尿管・膀胱・尿道)については,尿路変更術を行ったもので,非尿禁制型尿路変更術を行ったが,尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができない場合に,5級と認定されます。



(4)1上肢を手関節以上で失ったもの

 上肢とは腕のことで,鎖骨,肩甲骨,上腕骨,橈骨,尺骨の5つの骨で構成されています。「3大関節」とは肩,ひじ,手首のことです。「手関節」とは,手首を指します。
 「手関節以上で失った」とは,
  ①ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
  ②手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの
 のいずれかの場合をいいます。



(5)1下肢を足関節以上で失ったもの

 下肢とは足のことで,大腿骨,膝蓋骨,脛骨,腓骨といった骨や,股関節・ひざ関節・足関節までの3大関節及び足指から構成されます。後遺障害の認定上は,足指は別に取り扱われます。「足関節」とは,足首を指します。
 「足関節以上で失った」とは,
  ①膝関節と足関節との間において切断したもの
  ②足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの
 のいずれかの場合をいいます。



(6)1上肢の用を全廃したもの

 「1上肢の用を全廃した」とは,
 ①3大関節(肩・ひじ・手首)のすべてが全く可動しないか,可動域が10%以下に制限され,
  手指の全部の用を廃したもの
 ②3大関節(肩・ひじ・手首)が完全に麻痺したか,完全麻痺に近い状態で,手指の全部の用を
  廃したもの
 のいずれかの場合をいいます。

 なお,「手指の全部の用を廃した」とは,
  ①手指の末節骨の半分以上を失ったもの
  ②中手指節関節もしくは近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を
   残すもの
 のいずれかの場合をいいます。



(7)1下肢の用を全廃したもの

  「1下肢の用を全廃した」とは,
 ①3大関節(股関節・膝・足首)のすべてが全く可動しないか,可動域が10%以下に制限され,
  足指の全部の用を廃したもの
 ②3大関節(股関節・膝・足首)が完全に麻痺したか,完全麻痺に近い状態で,足指の全部の用を
  廃したもの
 のいずれかの場合をいいます。

 なお,「足指の全部の用を廃した」とは,
  ①第1の足指(親指)は末節骨の半分以上,その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの
  ②中足指節関節もしくは近位指節間関節(第1の足指(親指)にあっては指節間関節)に著しい
   運動障害を残すもの
 のいずれかの場合をいいます。



(8)両足の足指の全部を失ったもの

 「足指の全部を失った」とは,中足指節関節(足指の付け根の関節)から先を失った場合をいいます。



3 慰謝料の額

 後遺障害等級5級が認定された場合,後遺障害部分の慰謝料はいくらになるのでしょうか。
 慰謝料には3つの算定基準,低額なものから,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準があります。後遺障害等級5級の場合,各基準による慰謝料額は下記のとおりです。

 ①自賠責基準   599万円
 ②任意保険基準  700万円(保険会社により多少増減します)
 ③裁判基準   1400万円

 任意保険基準と比較しても,裁判基準だと2倍近い慰謝料額になります。ただし,裁判基準で慰謝料交渉をするためには弁護士に依頼する必要があります。



4 逸失利益の計算方法

 後遺障害が残った場合,逸失利益も受け取ることができます。逸失利益とは,後遺障害によって労働能力が失われたことによる将来の収入の減少のことです。

 逸失利益の額は,
  基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
 という計算式で求められます。

 詳細な説明はここでは割愛しますが,簡単にいうと,事故前の収入額を基礎に,労働能力が失われた割合と就労可能年数に応じた数値を乗じて算出するということです。
 後遺障害等級と関係があるのは労働能力喪失率で,5級の場合は原則として79%です。ただし,事故前の職種や後遺障害の具体的内容から実際にどの程度の労働能力を失ったといえるかによって変動し得るため,喪失率が大きく争われることもよくあります。



5 まとめ

 後遺障害等級が認定される場合は,弁護士が介入することにより慰謝料の算定基準が大幅に増額するため,弁護士に依頼することに大きなメリットがあります。
 では,どんな弁護士に依頼しても同じ結果になるのかというと,そういうわけではありません。適切な後遺障害等級を認定してもらうには,後遺障害の認定基準や医学的な事柄についての知識が必要ですし,逸失利益についてもご依頼者様から事故前の仕事内容や後遺障害による仕事への支障について丁寧に聞き取ったうえ,説得的な交渉を展開しなければ,十分な賠償を受けることができません。

 H&パートナーズ法律事務所では,後遺障害等級申請や交渉についての経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。ご依頼者様から丁寧にお話を伺いながら交渉を進めて参りますので,ご安心して無料相談にお越しください。なお,遠方の方はもちろん,関西近辺でも,ご来所が難しい方には出張相談を行います。その点もお気軽にお問い合わせください。



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