交通事故コラムcolumn

  • 2019.08.05

自賠責や労災への請求は面倒くさい?それぞれに請求できる費目と手続の概要

脊髄損傷を負うような大きな事故であっても,加害者の任意保険が事故態様などに争いがあるといった理由で支払を渋る場合には,事故による損害は基本的には自賠責保険へ請求することになります。また,通勤中や勤務中の事故であれば労災保険を使うことができます。それぞれ支払を受けられる費目はなんなのか,重なっている費目はどちらにも請求できるのか,手続はどのようにすればよいのか…。ここでは,自賠責や労災保険に対する手続と,支払いを受けられる内容を整理して,弁護士がご説明します。

 



目次

1 自賠責保険とは

2 労災保険とは

3 自賠責に請求できる費目

4 労災保険から給付される費目

5 重複部分の取扱い

6 自賠責への請求手続

7 労災保険から給付を受けるための手続

8 まとめ



本文

1 自賠責保険とは

 任意保険加入率は90%近くといわれておりますが,義務ではないためもちろん加入していない人もいます。これに対し,自賠責保険は強制保険とも呼ばれ、車の所有者に加入が義務付けられている保険です。 加入していなければ車検が通らず、一般道を走行することができません。
交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的とした自賠責保険ですが、補償されるのは人身部分(怪我等)のみで,物損に関しては補償の範囲外です。
 また,裁判をした場合に獲得しうる賠償額を基準としているわけではないことや,支払額の上限があるため,人身部分の損害を全てカバーできるわけではありません。

2 労災保険とは

 労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。業務中や通勤中に交通事故に遭った場合には労災保険から給付を受けることができます。
 従業員を1人でも雇っている事業所は、たとえ法人化していない場合でも労災保険に加入しなければなりません。労災保険の適用対象は、正社員、パート、アルバイト、日雇い労働者など雇用の形態を問わず、すべての労働者が含まれます。派遣労働者の場合は、派遣元の事業所が加入します。ただし,請負として報酬を受け取っている場合や,役員として報酬を受け取っている場合は,基本的に適用対象外となります。
 もし,雇用主が労災保険に加入していない場合でも、従業員は補償を受けることができます。その場合,雇用主にはペナルティが課せられることになります。

3 自賠責保険に請求できる費目

(1)傷害部分について

 傷害部分について請求できる費目は下記のとおりです。実際に出費を要したものについては実費の請求が可能ですが,入院諸雑費,慰謝料などについては裁判基準よりも低い基準額となっていますし,傷害部分での請求は総額120万円が上限となっており,120万円を超える部分については請求することができません。

費目 支払額・対象
応急手当費 応急手当のために直接かかった必要かつ妥当な費用
治療費など 必要かつ妥当な実費
柔道整復等の費用 必要かつ妥当な実費
ただし原則として医師が必要と認めたか,傷害の態様から必要性が認められる場合に限られる
入通院交通費 必要かつ妥当な実費
入院看護料 ①近親者の看護料:1日あたり4100円
※近親者が看護のため休業損害が発生した場合,被害者が12歳以下の場合は19000円を上限とし,それ以外の場合はその地域の家政婦等の料金を限度として休業損害分が支払われます。
②看護婦・家政婦の看護料:必要かつ妥当な実費
※いずれも被害者が12歳以下の場合か,必要性について医師の証明がある場合のみ。
通院看護料 ①近親者の看護料:1日あたり2050円
※近親者が看護のため休業損害が発生した場合,被害者が12歳以下の場合は19000円を上限とし,それ以外の場合はその地域の家政婦等の料金を限度として休業損害分が支払われます。
②看護婦・家政婦の看護料:必要かつ妥当な実費
※いずれも被害者が12歳以下の場合か,必要性について医師の証明がある場合のみ。
付添費 通院看護料と同じ。
※幼児や歩行困難者の通院に付き添ったとき又は医師の指示で自宅看護をしたとき。
付添看護交通費 必要かつ妥当な実費
入院諸雑費 1日1100円
ただし1日1100円を超えることが明らかな場合は,必要かつ妥当な実費
通院諸雑費 必要かつ妥当な実費
ただし療養に直接関係があり,以後の日常生活において使用価値のないものに限られる。
義肢等の費用 必要かつ妥当な実費
ただし眼鏡・コンタクトレンズは50000円が上限。
診断書等の費用 請求に必要なものを取得するための実費
診断書,診療報酬明細書,後遺障害診断書,医師の意見書,要看護証明書,要個室証明書,施術証明書・施術明細書など。
文書料 請求に必要なものを取得するための実費
交通事故証明書,印鑑証明書,住民票,所得証明書,納税証明書,戸籍謄本など
休業損害 1日5700円
ただし1日5700円を超えることが明らかな場合,19000円を上限として実額が認められる。
傷害慰謝料 1日4200円
※「治療実日数×2<治療期間」の場合は,「治療実日数×2」が対象日数,「治療実日数×2>治療期間」の場合は,「治療期間」が対象日数


(2)後遺障害部分について

 後遺障害慰謝料について請求できる費目は下記のとおりです。後遺障害慰謝料については,裁判基準では等級に応じて110万円~2800万円とされているのと比較すると低額になっています。逸失利益については,裁判基準と計算方法は異ならないものの,自賠責保険では後遺障害部分の支払上限が等級に応じ75万円~3000万円となっていますので,損害全額を請求できることは稀です。

費目 支払額
後遺障害慰謝料 等級に応じて32万円~1100万円
逸失利益 基礎収入額×労働能力喪失率×ライプニッツ係数


4 労災保険から支給される費目

 労災保険による補償は,費目ごとに名称が付されています。自賠責保険に請求できる費目との対応関係については,次の項で触れます。

費目 支払内容
療養給付 治療費等の実費,看護料・付添費・交通費の相当額
休業給付 給付基礎日額(事故前3か月の平均賃金)の60%
ただし起算日は休業4日目から。
障害給付 後遺障害等級に応じて,給付基礎日額の56日分~503日分の一時金または給付基礎日額の131日分~313日分の年金
傷病年金 療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず,傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合に,等級により給付基礎日額の245日分~313日分の年金
介護給付 後遺障害等級又は傷病等級1級又は2級の者で,常時または随時介護を要する者に支給され,常時介護の場合は月額10万4590円,随時介護の場合は月額5万2300円
休業特別支給金 給付基礎日額の20%
ただし起算日は休業4日目から。
障害特別支給金 後遺障害等級に応じて,8万円~342万円の一時金
傷病特別支給金 傷病等級に応じて,100万円~114万円の一時金


5 重複部分の取扱い

 自賠責に請求できる費目と労災保険から支給される費目は,名称が異なるため対応関係がわかりにくいので,まずは対応関係を整理します。
それぞれの費目の対応関係ですが,治療費・看護料・付添費・交通費と療養給付、休業損害と休業給付・傷病年金、後遺障害逸失利益と障害給付が同一費目とされます。
 重複していない費目については,自賠責保険と労災保険のそれぞれから給付を受けることになります。重複する部分については損益相殺(すでに受けた利益を損害から差し引くこと)の対象となり控除されるので,二重取りすることはできません。ただし,労災保険給付のうち,年金形式で支払われるものについては,基本的にはすでに期間が経過し支払いを受けられるようになった部分のみが控除の対象となり,将来受給できる部分については控除されません。
 非常にややこしいですが,自賠責保険への請求よりも労災保険の給付が先行する場合がほとんどだと考えられますので,特別支給金と将来分の年金以外については自賠責への請求をする際に控除されると考えておけば大丈夫です。

6 自賠責への請求手続

 自賠責へ請求してから保険金が支払われるまでの一連の流れは下記のとおりです。被害者がしなければならないのは①の部分だけですが,必要書類が多く,揃えるのには手間がかかります。
 ①当事者が自賠責保険会社へ必要書類一式を郵送する。
 ②保険会社が損害保険料率算出機構の調査事務所へ書類を送る。
 ③調査事務所が事故状況・損害の状況を調査。
 ④調査事務所が支払額・後遺障害等級などの調査結果を自賠責保険会社に報告。
 ⑤自賠責保険会社が支払額を決定し保険金を支払う。

 被害者が自賠責に請求する場合で,被害者が死亡していない場合に必要な書類は下記のとおりです。
 ①自動車損害賠償責任保険支払請求書兼支払指図書
 ②交通事故証明書
 ③事故発生状況報告書
 ④診断書
 ⑤診療報酬明細書
 ⑥付添看護自認書または看護料領収書(付添看護を要した場合のみ)
 ⑦通院交通費明細書
 ⑧休業損害の立証書類(休業損害があった場合のみ)
 ⑨印鑑証明
 ⑩委任状及び印鑑証明(第三者に手続を依頼する場合のみ)
 ⑪住民票又は戸籍謄本(親権者が請求する場合等)

7 労災保険から給付を受けるための手続

 労災保険の手続の流れは下記のとおりです。
 ①労働者から会社に勤務中又は通勤中に事故に遭ったことを報告
 ②労働基準監督署長に必要書類を提出
 ③労働基準監督署による調査
 ④保険金の給付

 労災保険の給付を受けるためには費目の対応する書式(厚労省のHPからDL可能)を提出する必要がありますが,交通事故の場合は第三者行為災害に当たるため,さらに下記の書類の提出が必要になります。
 ①第三者行為災害届
 ②交通事故証明書
 ③念書兼同意書
 ④示談書の写し(示談が成立している場合のみ)
 ⑤自賠責保険等の損害賠償等支払証明書又は保険金支払通知書
  (仮渡金又は賠償金の支払いを受けている場合のみ)
 ⑥第三者行為災害報告書(加害者が作成するもの)

8 まとめ

 自賠責保険と労災保険は,異なる制度でありながら保障の範囲が重なっているため相互の関係がわかりにくいですし,手続についても提出すべき書類が多く煩雑です。また,損害全ての費目について支払いを受けられるわけではないですし,自賠責保険では支払いの上限金額が設定されています。
 弁護士に依頼すれば,裁判基準で任意保険と交渉をしつつ,自賠責保険や労災保険へ適切な請求を実現することができます。
当事務所では経験ある弁護士が,寄り添いながら適切な賠償額を得られるためにお手伝いをさせていただきます。いつでもご連絡をお待ちしております。
 なお,遠方の方はもちろん,関西近辺でも,ご来所が難しい方には出張相談を行います。その点もお気軽にお問い合わせください。

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