交通事故コラムcolumn

  • 2019.05.31

家族が交通事故で介護が必要な状態に。将来かかる介護費用は受け取れる?介護保険は使えるの?

ご家族が不運にも交通事故に遭い,なんとか一命は取り留めたものの,植物状態に。自身の親の介護も考えないといけないので,付きっきりで介護することもできない。ヘルパーさんにお願いしたいが,その費用は保険会社から受け取れるのか,また介護保険に加入しているがこれは使えるのか…交通事故で障害が残り介護が必要となってしまった場合,ご本人だけでなくそのご家族も本当に大変です。保険会社から受け取れるお金や介護保険との関係について,分かりやすく弁護士がご説明します。

 



目次

1 交通事故の場合,65歳以上でないと介護保険は使えない!

2 保険会社から受け取れる介護費用

(1)治療費

(2)介護サービス料

(3)家屋改造費,装具代,福祉車両代等

3 将来介護費用は一括して受け取れる?

4 ご家族が交渉されることのリスク

5 まとめ



本文

1 交通事故の場合,65歳以上でないと介護保険は使えない!

 介護保険制度は,要介護高齢者の増加や核家族化に伴う高齢者世帯の増加,介護疲れ問題等に対応するため,平成12年4月,介護保険法の施行により始まった制度です。
 こうした背景もあり,介護保険は基本的には65歳以上の方(1号被保険者)を受給者として想定したつくりになっていて,65歳以上の方は,交通事故により要介護または要支援状態となっても介護保険を利用することができます。
 それに対し,40歳以上65歳未満の方(2号被保険者)は,介護保険が使える疾病が次のように法律で特定されており(介護保険法7条3項2号,介護保険法施行令2条),これ以外の疾病が原因の場合,要介護または要支援状態にあっても,介護保険を利用することができません。

〔介護保険法施行令〕第2条
法第7条第3項第2号に規定する政令で定める疾病は、次のとおりとする。
一 がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
二 関節リウマチ
三 筋萎縮性側索硬化症
四 後縦靱帯骨化症
五 骨折を伴う骨粗鬆症
六 初老期における認知症(法第五条の二第一項に規定する認知症をいう。以下同じ。)
七 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
八 脊髄小脳変性症
九 脊柱管狭窄症
十 早老症
十一 多系統萎縮症
十二 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
十三 脳血管疾患
十四 閉塞性動脈硬化症
十五 慢性閉塞性肺疾患
十六 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

 交通事故により残る後遺障害はこれら特定疾病には通常あたらないので,2号被保険者の方は,交通事故による後遺障害について,原則として介護保険を利用することはできません。
 そして,40歳未満の方はそもそも介護保険制度を利用することができません(保険料の納付もありません)。

2 保険会社から受け取れる介護費用

 このように,交通事故により被害者の方が要介護または要支援状態となった場合でも,基本的には65歳以上でないと介護保険を利用できません。
 しかし,そうはいっても,年齢にかかわらず介護費用はかかります。治療費をはじめ,介護サービスに支払う費用,介護ベッドや家の改造費,介護用の福祉車両代,装具代…これらが今後一生分かかるのです。少し考えるだけでも莫大な費用だと想像がつくでしょう。
 介護保険が利用できる場合は,被害者の方の負担分はこれら費用の1割のみということもありますが,利用できない場合は,原則,被害者の方の全額負担です。
 そこで保険会社から,これらの費用について適切な額を受け取る必要があるのです。

(1)治療費

 交通事故による受傷の場合,事故から治療を継続し,「症状固定」と呼ばれる時点の症状をもとに後遺障害の等級認定がなされます。そして,「症状固定」と判断される際は,それ以後の治療が大きな効果を上げないことを前提にされていますので,症状固定時以降の治療の目的は,「改善」ではなく「維持」にあるといえます。
 そのため,保存的治療にかかる費用はほぼ認められます。たとえば,経管栄養窃取に使うチューブ交換のための入院費用や入道バルーンの交換洗浄,主治医の定期往診費用等です。
 それに対し,リハビリ費用は常に認められるわけではありません。あくまで「維持」目的のリハビリとなるので,そのリハビリをしないと症状が悪化するといった事情,リハビリの効果につき,主治医意見が重要な資料となります。

(2)介護サービス料

 将来介護サービスに支払う費用が認められるためには,主治医の意見や被害者の方の症状により,介護が必要であると認められれば,介護費用が認められます。自賠責による後遺障害等級認定の中で「常に介護を要するもの」または「随時介護を要するもの」と認められれば(後遺障害等級1級,2級),介護が必要なことは明らかでしょう。
 介護方法については,もちろん,ご家族の方の介護も可能です。その場合は1日8000円を上限として介護費用が支払われます。ご家族の方が介護のために仕事を休んだこと等に対する補償という意味合いです。
 また,被害者のご家族にも事情が様々ある中で,常に介護することが現実的でないこともあるでしょう。その場合は,いわゆる職業介護人(介護士等)の費用の全額が支払われます。私どもの感覚では,「常に介護を要する」方の場合,1日あたり2万円前後と認められるケースが多いような印象です。

(3)家屋改造費,装具代,福祉車両代等

 被害者の方をご自宅で介護する場合,バリアフリー化に要する費用(家屋改造費)が認められます。特に,車椅子を使用する場合の自宅玄関へのスロープ設置や段差解消機,トイレ,浴室の改造等は認められやすい費用です。
 これら以外の費用については,「こういう事情で必要なんだ」ということを被害者やそのご家族が説明しない限り,裁判所は認めることに消極的です。たとえば,敢えて介護ベッドを2階に配置し,エレベーターを設置したような場合は,よほどの理由がない限りエレベーター設置費用は認められません。
 家のバリアフリー化以外にも,主治医に装着が必要だと指示された装具や福祉車両(車椅子ごと乗ることができる特殊形状の自動車)の費用は比較的認められやすい傾向にあります。

3 将来介護費用は一括して受け取れる?

 2で述べた費用のほかにも,交通費やおむつ代など,将来にわたって介護をするには様々な莫大な費用がかかります。
 では,この費用は,示談や訴訟の判決後に一括して受け取ることができるのでしょうか。
 まず,支払い方法としては,その①一括払い(「一時金払い」といいます)と,②分割払い(「定期金払い」)の2種類に分けられます。
 最高裁は,プール事故により四肢障害を負った中学生について,「損害賠償請求権者が訴訟上一時筋による賠償の支払を求める旨の申立をしている場合に定期金による支払を命じることはできないものと解するのが相当である。」と判示し,原則①一時金払いによるべきと判断しました(最高裁昭和62年2月6日判決)。しかし,この判決は,②定期金払いの方法を定めた法律(民事訴訟法117条)が施行される前の判決であり,実際,この判決以後,②定期金払いを認める判決も複数出ています。
 結論としては,①と②どちらの支払方法によるとされるかは,個々のケースの事情によります。
 その際特に考慮される事情は,加害者の支払能力に問題があるか,今後発生する介護費用につき事情が変わる可能性(症状の安定性等)です。そのため,加害者が任意保険に加入しており支払能力に問題がなかったり,症状悪化が予想され平均余命までの生存可能性が低いといった場合は,今後の事情変更に合わせて支払いも変更できる②定期金払いとされる傾向にあります。
 他方で,何度も何度も分割で支払いがされることそれ自体が被害者側の苦痛であるといった被害者の気持ちへの配慮が見られる判決もあります(福岡高裁平成23年12月22日判決)。
 これらから,一括払いをご希望の場合は,症状が安定しており現時点で予想される損害額がそのまま発生する見込みである,定期金払いによること自体の苦痛を主張する必要があることが分かります。

4 ご家族が交渉されることのリスク

 以上は介護保険を利用しないことを前提にした説明ですが,それら全てが将来の話,つまり現時点では発生する「可能性」でしかない損害なので,どのような費用が認められるか,その相場はいくらなのか,支払方法はどうするか,といった難しい問題が多数あります。それにもかかわらず,その金額はかなりの高額となることが多く(通常,保険会社から受け取る最も大きい損害項目の1つです),不当な示談をさせられた場合の損失は計り知れません。
 その上,被害者の方が65歳の場合で介護保険を利用した場合には,保険会社から受け取った金銭と介護保険の調整方法や負担しなかった9割分がどのように処理されるかといった,さらに難しい問題もあります。

 保険会社は「敵」ではありませんが,必ずしも被害者の利益を考えているとも限りません。
 我々弁護士であれば,適切な見通しのもと,被害者やそのご家族のお気持ちに寄り添いつつ,支払方法も含め,保険会社から適正な保険金を受け取ることができます。

5 まとめ

 今回は,被害者の方が介護を要する状態になった場合の介護費用についてお話してきました。金額や支払方法,そしてそれらを保険会社と交渉することの難しさがあるということは何となくお分かりいただけましたでしょうか。
 当事務所では,重度後遺障害の方やそのご家族からのご相談を多数承っており,今回の介護費用についても,各ご事情に合わせた見通しのご説明が可能です。
 ご家族全員の今後の生活に関わる重要なお話です。現状,保険会社と揉めていなくても全くかまいませんので,ぜひ当事務所までお気軽にご相談にお越しください。親身にわかりやすくご説明させていただきます。

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